手漉き和紙の新しい応用を目指し、宮城の伝統和紙とPBSシートを重ねて乾燥後、ホットプレスで成形して環境に優しい複合材料(グリーンコンポジット)を作製しました。そして、PBS、和紙、グリーンコンポジットの力学特性を評価するため、引張試験を行いました。図1は和紙1層・PBS2層(W1P2)、和紙2層・PBS1層(W2P1)、和紙3層・PBS2層(W3P2)を重ねて作製したグリーンコンポジットと和紙単体(WASHI)、PBS単体の応力-ひずみ曲線を示したものです。3層の和紙と2層のPBSからなるW3P2の縦弾性係数は大きく、引張強さは和紙単体に比べて約2倍程度です。図2はW3P2の断面画像です。和紙とPBSを積層して作製したグリーンコンポジットの断面は、PBSが和紙に含浸して繊維を取り囲んでいるように見えます。PBSが繊維を包んで繋いでいるため、引張強さが増加したと考えられます。
図1. 和紙、PBS、グリーンコンポジット(W2P1、P2W1、W3P2)の引張試験結果。 右上隅の写真はW3P2 と和紙。
図2. W3P2 の断面画像。赤色の部分は和紙。
図3. (左)CO2 発生量と日数の関係。(右)分解率と日数の関係
図4はコンポスト中におけるグリーンコンポジットの縦弾性係数、引張強さ、破断伸び、密度の変化をまとめたもので、比較のため、水中にグリーンコンポジットを入れた場合の結果も示しています。コンポスト中のグリーンコンポジットの縦弾性係数、引張強さ、破断伸びは、水中の場合と異なり、4週間後に急激に低下しています。一方、コンポスト中のグリーンコンポジットの重量は2週間後に15%低下しています。
図5は、縦軸に縦弾性係数、引張強度、伸び率の低下率を、横軸に生分解率を示したもので、PBSとグリーンコンポジットを比較しています。興味深いことに、縦弾性係数、引張強さ、破断伸びの低下率と生分解率には相関が見られ、偶然にも材料に関係しない結果が得られました。一方、重量の低下率と生分解率との関係は示していませんが、相関は見られたものの、材料によって異なる挙動を示しました。
図4. コンポスト/水中における PBS および W3P2の (左上) 縦弾性係数、(右上) 引張強さ、(左下) 破断伸びおよび (右下) 重量の変化。
図5. (a) 縦弾性係数、(b) 引張強さ、(c) 破断伸びと生分解率の関係