現在の鉄鋼生産では大量のCO2を発生させ、多くのエネルギーや資源を必要とします。低環境負荷社会の実現をめざし人類が直面している"資源、エネルギー、環境の問題"を克服する「新たな鉄鋼材料」、これを象徴的に"グリーンスチール(Green Steel)"と呼びその実現を目指しています。具体的にはこれまであまり重要視されていない特性、例えば、リサイクルの容易さ、合金元素の低減、耐用年限の長期化、炭素排出の少なさ、廃棄物量や生産エネルギーの低減などの観点から、環境負荷を最小にし、特性・機能を最大にする全く新しい材料としての鉄鋼材料とその製造プロセス研究の進めます。
グリーンスチールは従来の鉄鋼材料とは基本的に異なる考え方に基づいています。基礎科学の観点からもグリーンスチール実現には多くの解決すべき課題があり、最近発展してきているナノテクノロジー、情報科学、複雑系科学などの異分野の研究成果を取り込んだ新しい材料科学の学術体系が必要となります。グリーンスチール開発はエネルギー、環境、資源問題など地球規模の問題に関わる科学技術であり、見方を変えれば容易には達成できない課題でもあります。しかし、将来の社会や産業に有益となる長期的かつ高い公共性の観点からその開発を持続的に推進していく必要があるといえるでしょう。