3Dプリンタによる
航空宇宙用セラミックスの開発研究


私の専門は材料力学という分野ですが、中でも複合材料、つまり2つ以上の材料を組み合わせて機能を融合し、力学特性を中心にその特性を評価することが基本になります。まず使用目的に応じた諸特性の目標があり、それに対してどのように材料を組み合わせたら達成できるのか、そのためにはセラミックスでも、ポリマーでも、金属でも、材料にはこだわらずに研究をしています。このような私の研究の基礎は工学院大学名誉教授の塩田一路先生の教えによって学生時代に形成されたもので、今でも大変尊敬しております。また、学生時代の同級生であり、現在は東京大学助教の加部泰三先生とは互いに切磋琢磨してきた親友であり、現在の研究分野は多少異なりますが、今でも大きな刺激を受けています(写真1)。

研究対象のひとつに「航空宇宙材料」があります。例えば航空機のように何度も使える宇宙往還機を開発する場合、大気圏突入後の高温に繰り返し耐えられる材料が必要になります。これまでは地球帰還後に若干の損傷があっても、使い捨てなので問題なかったわけですが、再度宇宙に飛ばす場合、材料には安全性の担保が求められるのです。今のところその素材は耐熱セラミックということになります。

現在研究されている再利用型航空宇宙機の形状は、新幹線を想像してもらえば分かるように、空力上は曲面があることが理想的なのですが、セラミックスではある程度の大きさできれいな曲面を安価に自在に作る技術がまだ確立していないのです。

そこで私たちは「3Dプリンタ」に着目し、三次元造形による航空宇宙用耐熱セラミックスを作るための研究をしています。耐熱性は最大で3000度程度が目標値となっています。 材料開発の分野においても3Dプリンタは多くの場面で利用されるようになっていますが、現在の主流は金属の積層造形であり、レーザなどで金属粉末を溶かしながら形を作っていく方法になります。 しかしこれではセラミックスを溶かすまでの温度にはできないので、「直接書き込み法」という、材料を溶かした液体(スラリー)でプリント造形し、次に成形したもの(グリーン体)を熱処理して焼結体にしています。

ここで問題になるのが、直接書き込み法での3Dプリンタそのものがまだ研究段階にあるということです。そこでその開発研究も行いながら、セラミックスの部品を作り、できたものの力学特性や強度の評価を行っています。三次元造形の場合、物質内部が方向によって異なる性質を持つ「異方性」が生じてしまうリスクもあります。

今は例えば、アルミナ繊維とアルミナ基複合材料での三次元造形を行うなど、セラミックスを使った造形技術の研究を行っていますが、将来的にはポリマーや金属への適用拡大も期待されるところです。

(図/写真1)

2016年、フランス滞在から帰国後、親友および恩師と共に。左:東京大学助教・加部泰三先生、中央:工学院大学名誉教授・塩田一路先生。

取材風景
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